梓ははっとして、性眼の腕の中で、顔を上げた。

先程まで梓を抱いていた人造人間の腕に、無数の目が生えて、動きを封じていた。

「こんな…機械人形!」

響子の目が光り、人造人間の目を見据えた。

心を除去されているとはいえ、人造人間は明らかに神経をベースにして、機械が埋め込まれていた。

脳細胞を破壊したら、完璧に動きが止まるはずだ。


しかし、突然目が真っ白になり、目からの情報を遮断した。

「何!?」

唖然となる響子の頭上から、声が落ちてきた。

「馬鹿が!お前の能力など、お見通しだよ」

響子は、その声を聞いた瞬間、後ろに飛んだ。

とすぐに、クレアのかかと落としが、響子のいた場所の地面を抉った。

「クレア!」

響子は体勢を立て直しながら、叫んだ。

「性眼!梓様を連れて、逃げろ!」

その言葉に、クレアはにやりと笑った。

「やはり…こちらが、本物か!」

「性眼!逃げろ!」

一瞬で間合いを詰めるクレアに、性眼は目を見開いた。

すると、クレアの体に、無数の目が生える。

「馬鹿が!」

クレアの一喝で、目は消滅し、性眼の目から、血が流れた。

「この程度の力で、神であるあたしを縛れるか」

クレアの口から、鋭い牙が覗かれた。そして、右手を突き出すと、衝撃波が性眼だけを吹き飛ばした。

クレアは、さらに左手を突き出すと、空中に浮かんだ梓を引き寄せる。

「さあ!女神よ!あたしに力を!」

クレアは、口を大きく開いた。

「梓様!」

間に割って入ろうとした響子に、性眼の呪縛から開放された人造人間が、ぶつかってきた。

「きゃっ!」

吹き飛んだ響子を、唐突に現れた空牙が受けとめた。

そして、人造人間の後ろから、輪廻がジャンプし、人造人間の頭に手をかけると、そのまま飛び越した。

輪廻が着地すると同時に、人造人間は錆付き、活動を停止した。

「時使いか…」

響子は一瞬で、輪廻の能力を理解した。

(ほお…)

空牙は心の中で、感心した。