「海が、綺麗ですね…」


しみじみと言う僕に、ロバートは少し驚き、

しばらくして納得した。

「君の世界は、科学の世界だったね…。この世界は、燃料を使わないから…」

「燃料を使わない?」

僕は思わず、ロバートに顔を向けた。

「すべては、自然と大地の理の中で…」

ロバートは、カードを僕に示した。

「昔、科学に興味を持って…シミュレーションをしたことがある。燃える水に、燃える気体。便利ではあるけど…それによって、人は大切なものを失うことに、気づいた」

「大切なもの?」

ロバートは深く頷き、

「自然の恵みと美しさ。この星は、人間だけのものじゃないからね」

ロバートはカードのテンキーを押すと、岩場そばに…テントを召喚させた。

「向こうの岩場の影で、少し休もう。念の為、結界は張っておくから」

三角のテントに入ろうとするロバートの背中に、

僕は問いかけた。

「どうして、この世界は綺麗なのに!どうして、魔物がいるんですか!」


「そうか…。君の世界は、魔物がいないんだね」

ロバートは振り返り、僕の目を見て、

「理由は、魔物がいるからだよ」

「魔物がいるから…」

僕には、ロバートの言葉の意味がわからなかった。