「何か…おかしいのよねえ〜」

梓は教室から出て、渡り廊下にした。

クラスのみんなは、転校してきた梓達に優しかったが、

妙な息苦しさを感じていた。

つねに、見られてような視線を感じていた。


だから、梓はトイレに行くと言って…教室の反対側の渡り廊下に、気を休めに来ていた。


手摺りにもたれ、溜め息をついた梓は、後ろに気配を感じて振り返った。

「!」

反対側の手摺りの前で、腕を組み、こちらを見ている輪廻がいた。

じっと無表情に、梓の背中を見つめていた。

「………て、天道さんも…抜け出して来たの?」

同じ転校生同士である。仲良くはしたい。

梓は、輪廻の方に体を向けた。

愛想笑いを浮かべたが、輪廻は無表情だ。



「ハハハ……。何か…初日って、緊張するよね。だから、ここで息抜きしょうと…」

梓はわざとらしく、背伸びをした。

輪廻はずっと、梓を見ているが…焦点は合っていないように感じた。

「…してたの…」

梓はどう接していいか…わからない。

少し気まずい空気が、流れた。風が、渡り廊下を横切った。

梓の髪が、風になびいた。

「あたしは…」

梓が髪を押さえると、輪廻が口を開いた。

「あんたのそばにいると……やつらが来るからだ」



「やつら?」

梓には、意味がわからなかった。

「もう来てる…」

輪廻は、また吹き抜けようとする風に、手刀をたたき込んだ。

風に、赤い線が走り、黒板を爪でかいたような金切り声がした。

梓は思わず、耳をふさいだ。

渡り廊下の真ん中で、風が集まり、赤い線が絡まり合い…まるで、毛玉のようになる。

「違ったか」 

輪廻は、セーラー服のネクタイを外した。

風になびくネクタイが、硬質化し、刃物のように妖しく光り出した。

そして、ネクタイを前に突き出すと、輪廻は毛玉向かって、突進する。


梓には、何が何かわからない。

毛玉から、二本の鋭いものが、飛び出してくると、

輪廻に向かって、襲いかかる。

輪廻の体が消えた。

襲い掛かってきたものは、渡り廊下のコンクリートに突き刺さった。

「鎌?」