始業のチャイムが鳴り響いた。

戦前からあった校舎のほとんどが、焼き落ちており…新たにつくられた校舎は、まだ新しいはずなのに、白い壁が薄汚れていた。


焼け残った南校舎と、対になるように建てられた新たな校舎と、校舎間を結ぶ中央館。

中央館は、校門近くにあり、下駄箱や水飲み場…実験室等があった。


梓用の下駄箱は、用意されていた。

一番最初についてしまった梓は、教室に向かうよりも…職員室を探した。


(新館って…)

少し戸惑っていると、梓の横を髪の長い女生徒が、通り過ぎて行った。

「こっちだよ」

追い抜き際、女生徒は呟くように、梓に言った。

「あっ…はい」

思わず返事をしてしまった。

どこか大人びて、切れ長の瞳が、印象的だった。

梓は、女生徒の後ろを付いていった。



新館の一階の奥にある職員室で、担任を紹介されると、今度は担任に付いて、梓は教室へと来た道を戻っていく。 

驚いたことに、隣には女生徒もいた。

何と同じクラスだという。

(同じ年だなんて…絶対、あたしより年上に見える)

梓は、ちらっと女生徒を見た。

女生徒は、まっすぐ前を向いている。

まあ…梓は中3なんだがら年上はあり得ないのだが。


緊張しながら、担任が入った後、梓と女生徒が順に入る。

「新しい仲間を紹介します」

担任の言葉とともに、騒ついていた教室が静まり返る。

教壇の横に立つ梓と、女生徒。

担任が、黒板に名前を書き、一通り説明した後、

「じゃあ…簡単に自己紹介をして貰おうか」 

担任が、梓達を見た。

梓は鞄を前に持ち、大きく深呼吸した後、一歩前に出た。

深々と頭を下げ、

「……から来ました。赤星梓です。よろしくお願いします!」

と、少し力みすぎ…予想外の大声で、梓は挨拶をしてしまった。

それとは、対称的に…女生徒はたんたんと、低い声で言った。

「天道輪廻。よろしく…」

軽く首だけで、頭を下げた。