「綾子……やめよう。こんな所で、こんなことをしても…無駄なだけだ」

僕は、シャイニングソードをチェンジ・ザ・ハートに戻した。

そして、チェンジ・ザ・ハートは分離すると、どこかへ飛んでいった。

僕は、距離をおいて対峙する綾子を、切なげに見つめ、

「こんなことをして…どうすんだ。ただ放射能が漏れて…周囲を汚染するだけだ!それに…お前達…魔獣因子を持つ者達がもし、世界を支配したいのなら…」

僕の目から、魔獣と化した綾子の姿を見て、涙が溢れた。

「人間は……いや、母さんはどうするんだ!」

僕は思わず、声を荒げた。

「母さん…!?」

綾子は、僕の言葉にせせら笑った。

「母さん……………クククク」

やがて、身をよじらして笑うと、

赤き眼光が、僕を睨んだ。

「家族を捨てた男が!何を言うか!」

綾子の筋肉が盛り上がり、僕に突進してくる。


「ストロングモードか…」

アルテミアは呟いた。

「もう一度…心臓を握り潰してやる!」

綾子は、拳に力を込めた。

「綾子……」

僕は、動けなくなった。

反論もできなかった。なぜなら、綾子の言葉が正しいからだ。

「浩一!」

渾身のボディブローが、無防備な僕の心臓に、ヒットした。


「うわああ!」

僕の全身に、痛みが走り…まだ完治していなかった心臓が、一瞬…動きを止めた。

綾子は、にやりと笑い、拳を心臓にたたき込んだ体勢のまま…僕の耳元に囁いた。

「人は、みんな殺す…。それに、例外はないわ」


「綾子…」

僕の口から、血が流れた。

「だから…心配せずに…」

綾子は微笑み、



「死にな!」

心臓を食い込んだ拳から、光が溢れ…爆発した。


「赤星!」

アルテミアの声も虚しく…僕の体は、吹っ飛んだ。


背中から地面に落ち、砂埃を上げながら滑ると、僕は五メートル程先で止まった。