黄昏に香る音色 2

和也は、高級マンションの最上階の一室に帰る。

部屋に入ると、ベットに横になり、

少し考えた後、唇を噛み締め、携帯に手を取った。

すぐにはつながらない。

留守電になった。

「直樹、すまない…いっしょにいけなくなった」

言葉がでない。

「…家の都合で、大路学園を受けることになった…すまない」

和也は電話を切ると、携帯を壁に投げた。


「和也さん…帰ったんですか」

ドアの向こうで、声がした。

和也が返事すると、ドアが開き、一人の女性が入ってきた。

スラッとした細身の女性…和也の母親だった。

「兄さんに呼ばれたんでしょ…どんな用件だったんですか」

母親の律子は、会長とはかなり年が離れていた。

「進学する高校をかえられたよ」

和也が、吐き捨てるように言うと、

慌てて、律子は和也のそばに走り寄る。

和也の両肩に手を置き、心配そうに、和也を見た。

「兄さんに逆らってはいけません…我慢して下さい」

「母さん…」

「今は我慢して下さいね」

律子は言葉とは違って、口調は厳しく、きつかった。