黄昏に香る音色 2

「今日…お前を呼び出したのは、ほかでもない」

会長は和也を見ない。

「東條に、いくのはやめろ…お前は、大路学園にいけ」

和也は驚き、

「どうしてですか?」

「東條は、全寮制だが…大路なら、通える範囲だ」

「なぜです!理由は」

「テーブルの上に、ある写真を見ろ」

和也は、テーブルに近づき、そこにある写真を、手に取った。

「その女を監視しろ。それが、お前の仕事だ」

「監視…」

そこに写る人物を、和也は知らなかった。

「誰です?」

「お前の知ることではない」

「しかし…誰か知らないと…」

「お前と、同じ学年になる。入学したら、しばらくは監視だけを続けろ」

会長はそれだけ言うと、

「もう用はない。下がれ」

和也は出ていく前に、もう一度きいた。

「誰です…せめて、名前だけでも教えて下さい」

会長は横目で、和也を少し睨む。

「速水香里奈だ」



和也は会長室を出て、もう一度写真を見た。

普通の女の子だ…。

なぜ監視など…。

しかし、和也に断ることはできなかった。