(人には出会いと、運命があります)

恵子は、啓介をあやしながら、

(こんな素敵な出会いを、断る人間はいません)


「今、そう思っていても…いつか、憎くくなるかもしれない」

恵子は、ゆっくりと首を横に振った。

(もし、あたしがそうなったら…いつでも、あたしから、この子を取り返して下さい)

恵子は視線を、夕陽に照らされた海に向けた。

(こんな素敵な場所で…こんな素敵な出会いに…あたしは今、一番の幸せを感じてるんです)

そう言って、振り返った恵子のまっすぐな瞳。

そう…それは…紛れもなく、

明日香の

香里奈の

瞳と一緒だった。



「血が繋がっていなくても…みんな…」

サミーはまた、お酒を注いだ。

「あんたの子供だな」

サミーは一気に飲み干すと、

再び仕事へと戻った。

テープをかけ、

いずれまた、

素晴らしい音が、生まれることを願って…。

その瞬間に、できれば…

立ち会えることを夢見て。

また音楽と、向き合っていく。