サミーは、一口飲んだ。

顔をしかめた。

(こいつは…ロックが似合う)

サミーの脳裏に、

グラスを傾けて、一気に飲み干す…健司の姿が蘇る。

「こんなのが、うまいのか?」

サミーの言葉に、健司は苦笑する。

(これが、分からんようじゃ〜。まだまだだな)

サミーが、初めて認めた日本人。

(こんな酒…まずいわよね。サミー)

健司の隣にいる女。

安藤理恵。

(よく飲めるわね)

理恵は、顔をしかめながら、スタジオから出ていく。

(女にゃ…分からんさ)

健司は、一気に飲み干す。

空のグラスを見つめ、

(そう言えば…これが好きな女がいたな…)

健司は、悲しげに笑った。





自由の女神が見える埠頭に、啓介を抱きながら、

恵子はいた。

「あんた…本当に育てられるのか?」

自分を捨てた男と、奪った女の子供。

それなのに、育てる。

そんなこと信じられなかった。

「今、一時の感情で…赤ん坊が、かわいいとか…そんな理由なら…」

サミーの顔を、恵子は見た。

その余りに、真剣な眼差しに、

サミーは言葉を止め、息を飲んだ。