絶え間なく流れる音楽。

毎回ヒット曲は生まれる。

それは、本当にヒットしてるのだろうか…。

サミーは、ニューヨークのスタジオで、

次々に送られてくるテープのミックスダウンに、追われていた。

昔は聴く度に、感動があった。

今は、アンダーグランドからメジャーまで、音が似ている。

ビッグになる為、すぐに売れる為。

ブラックミュージックも変わった。

昔は売れなかった。

ブラックなんて。

だから、売れなくても、

音楽的にクールで、革新的で、どこにもないものを創ろうとした。

初期のヒップホップから、音楽は止まっている。

サミーは、テープを止めた。

無音の中、

ウィスキーの水割りを、自分でつくる。

グラスの中で、氷が転がる音だけが、スタジオに流れる。

サミーは、一気に飲み干すと、

普段は飲まない酒…あるボトルを手に取った。

それは、啓介が置いていった酒だった。

(母さんが、好きだったんだ)

啓介の顔が、浮かんだ。

サミーは、グラスの中身を捨てると、新しい氷を入れ、

その酒を注いだ。

もう歳だから、普段は水割りにしているが、

「こいつは…ロックが似合う」