黄昏に香る音色 2

「ダブルケイに戻ったな…」

大輔はため息をついた。

いつものスタジオ。

ドラムを録音していた。

LikeLoveYouのメンバーであった龍田が、ドラムを叩いていた。

明らかに、里美に嘱されていた。

「仕方ないけど…」

志乃はミキサーに、頬杖をつけながら、

スタジオで、ドラムを叩く龍田を見つめた。

子供の頃、香里奈もよく言っていた。

あたしには、2人のお母さんと、

お姉ちゃんがいると。


「羨ましい」

志乃はそう呟いた。

大輔はちらっと、志乃を見、すぐに視線を外した。


「でも…」

志乃の頭に、香里奈の笑顔が浮かぶ。

(お姉ちゃん)

志乃は、深くため息をつき、

「仕方ないか」

そう呟くと、大きく背伸びをして、

志乃はブースから、録音ルームに入る。

マイクを指差すと、

ブース内に合図をする。

大輔は、スタッフに告げた。

「予定をかえる。好きにやらせてやってくれ」

大輔は、志乃に頷くと、

志乃は微笑み、歌い出す。

I Say A Llittle Player

オーディションで、香里奈が歌った曲だった。