黄昏に香る音色 2

「だから…その子は今、大人になったのよ。それを今、邪魔したら…その子の成長を、潰すことになる」

明日香の言葉に、啓介は肩をすくめ、

「わかったよ。お前は、そういうやつだ。まったく、他人の子供なのに…」

啓介はあきらめ、覚悟を決めた。

「あらあ。他人じゃないわ。香里奈の友達よ」

当然じゃないと、逆に啓介に驚く明日香に、

もう啓介は、反対する気はなくなっていた。

こういう女だから、啓介は惚れたのだから。

「一応…如月グループが、今関わってるプロジェクトには、俺にも依頼が来てた。だから…それとなしに、探りを入れておくし…何とか、社長にも会ってみよう」

「啓介…」

啓介は頭をかき、

「確か…あの社長は今、音楽業界のコネを、つくるのに、躍起になってるはずだから」

「ありがとう。啓介」

明日香の笑顔と、感謝の言葉。

啓介の一番の弱点だった。

「ったく…仕方がないな」

啓介は毒づきながらも、店に戻る為、ドアのノブに手をかけた。

「啓介」

いきなり、耳元で、明日香の声がして、

「え?」

振り返った啓介の頬に、明日香は口づけをした。

そして、啓介に微笑みながら、先に家の中に入った。