黄昏に香る音色 2

舞台への扉を開けた香里奈が見た光景は…

300人近く入る観客席を埋める人々。

但し、若い人はいない。

全員がスーツ姿の年配の方々。

「速水香里奈さん!ステージへ、どうぞ」

観客席の一番前には、

里緒菜のお母さんや、

メイン審査員として、志乃がいた。

「志乃ちゃん…」

香里奈はステージに上がる途中、志乃に気付いた。

ステージ上には、生バンドがスタンバイしていた。

大輔たち…。

今は、志乃のバックバンドであり、

かつては、LikeLoveYouだったメンバー。

そして、ドラムセットに座る

里美。

「さ、里美おばさん…」

唖然とする中、演奏は始まった。

アレサ・フランクリンで有名な、

I Say A Little Player。

バート・バカラック作曲の名曲が、始まった瞬間、

まるで、ナイフのように鋭いスネアの音が、

香里奈の背中を切り裂いた。

(え!)

心の中で、驚きの声を上げながらも、

香里奈は歌う。

曲の間中…

香里奈の背中は、後ろから、音のナイフで、切り刻まれていた。


曲が終わった。


香里奈は、汗だくになりながら、

ステージに膝をついた。