「何か問題でもありますか?」

母親の質問に、

「いえ…」

里緒菜は呟いた。

「新たなプロジェクトをやる時に…スキャンダルは、避けなければなりません」

母親は、椅子から立ち上がると、

里緒菜のそばに来た。

「あんな学校にいても、企業のプラスにはならないわ」

里緒菜は、部屋に来てから、初めて、母親を睨んだ。

「あんな学校だなんて。企業のプラスになる為に、通っているわけじゃないわ」

里緒菜の剣幕に、

母親は鼻を鳴らした。

「友達ね」

母親は、軽くこめかみを押えると、

再び椅子に座った。

イライラと、ディスクを指で叩きながら、

「そう言えば…あなたの友達に、歌手がいたわね」

母親は叩くのをやめ、

「少し話題になってたわね。その子が、参加してくれるんだったら…転」

「あの子は、そんな安ぽい歌手ではないわ!」

里緒菜の怒りに、

母親は笑った。


「少し歌が上手いだけでしょ?」

里緒菜は、母親の笑う姿を見て、

これ以上話しても、無駄だと感じた。

「失礼します」

頭を下げた里緒菜に、

「その子が、うちの為に歌うなら…考えてもいいわよ」

母親は、笑いながら言った。