黄昏に香る音色 2

「好きだから…伝えない方が、いいときもある」

和也は、優を見、

「あんたには…わからんさ」

そのまま、前を向くと、
もう優の方を、振り向くことはなかった。

「ちょっと待ちなさい!」

優は、和也に走り寄ろうとしたその瞬間、

けたたましいサイレンが、近づいていた。

パトカーだ。

校内放送が、学校中に響き渡った。

「全校生徒は、直ちにグラウンドに集合して下さい」

生徒達が走りながら、校舎から出てくる。

「何事だ…」

和也は、1人の生徒の腕をつかんで、きいた。

生徒は慌てながら、こたえる。

「本田先生が…包丁をもって、暴れてるらしい」

「え!」

「もう何人か、切られてるらしいぜ」

信じられないことだ。

「それで?」

「今は、屋上に立てこもってるらしい…」

その言葉をきいた瞬間、

和也は走り出した。

みんなとは違う方向。

屋上へ。