音楽活動は、停止していた。

優は潔くありたかった。

あの人のように、

天才といわれる人々のさらに、上にいたあの人に。

天才になれないなら、死ぬ価値すらない。




夜は、誰も来ない…この公園で、ギターを弾く気になったのは…

あなたの為…。

山に近い…この場所は…あそこに近い。

アコースティック・ギターを取り出し、奏でる音は、ジャンゴ・ラインハルトの曲。

マイナー・スゥイング。

ジプシー・ミュージック。

アメリカで初めて認められた…異国のギターのカッティングは、どこかレゲエのリズムにも似ている…。

いや、スカに大きく影響を与えているはずだ。

ウキウキするようなリズムでありながら…哀愁がある。

ジャンゴは、大火事にあい、その際、左手2本が使えなくなった。

それなのに…

彼は、独特のサウンドを生み出した。


優は、歌をうたわなかった。

言葉を発さないと、メッセージは伝わらない。

しかし、

言葉に頼った音楽は、進化しないし…

必要なかった。

あたしもまた、異人…。

異人は、言葉を残さないし、

残すべきではない。