ギターケースが嫌いだった。

音楽をやってます。

いや、

テニスや野球のバックも嫌いだった。

何かやってます。

それだけで、まるで特別のようになる日本。

趣味…。

学生時間だけで燃え尽きるもの。

それだったら、あたしは死ぬまでやりたい。

それは、ダラダラやるのではなく、明日までいいから、

死ねる程の真剣さ。

親戚のおばさんは、燃え尽きるように、亡くなった。

家庭も、子供も捨てて、彼女は亡くなった。

女として、母親として、最低だと、周りは言った。

でも、あたしは…

どこか、羨ましく、潔く…格好良く感じた。

なぜなら、

誰も、そこにはたどり着けないから…。

あんたらは、女になれても、

母親になれても、

あの人には、なれない。


ギターケースをさらに、布で隠し、優は、歩いていた。

自分に才能がないのは、わかっていた。

周りは言った。

上手い。

凄い。

天才だ。

だけど、優にはわかっていた。

周りに、すぐにわかるレベルの天才は…

天才ではないことを。