「牧村先生」

廊下を歩いていたゆうに、淳が後ろから、声をかけてきた。

ゆうは振り返った。

ニヤニヤ笑みを浮かべながら、淳はゆうに近づいてくる。

「何か?」

ゆうは直感的に、淳の中に、嫌なものを感じていた。

それは…。

「いや〜牧村先生は…この学校の先生方の中で、特に!生徒に、人気があられる」

ゆうは無言で、淳を見つめる。

妙な上目遣いで、淳はゆうを見上げ、

「うらやましいぃ!」

大袈裟に言うと、大声で笑い出した。

「何ですか?」

もう授業だ。

馬鹿に構っている暇は、ない。

いきなり、笑うのをやめ、淳はゆうに顔を近づけ、

「いじめって…なくなると思いますかあ?」

淳の何とも言えない表情に、ゆうは眉をひそめた。

そんなゆうを見て、また淳は笑う。

「牧村先生…はいいなあ…本当…いい先生だあ」


「先を急ぎますので」

ゆうは、その場を立ち去ろうとした。

しかし、淳が腕をつかんだ。

「なくなりませんよ…いじめは」

にやっと、満面の笑みを浮かべ、

「なぜか、わかりますか?それねえ…ガキどもが、暇で、楽で、馬鹿で、責任感も何〜もないからですよ」