部屋にあるー全身がうつる程の大きな鏡は、

毎日、

あたしに確認させる。

自分の商品価値を。

普通よりは、上だと思う。

それは…そうでいられるように、

毎日努力してきたから…。

女は顔や容姿じゃない。

と、言い切れる環境にいる人が、羨ましかった。

本音と建て前。

薄ぺらい建て前の、

透けた本音。

そんな視線と、賞賛の中で、生きてきた。

そんな世界から、少しでも逃げたくて、公立の高校にいくことにした。

確かに、そこにも、

イジメやいろんな問題があったけど、

所詮同い年だ。

あらゆる世代から、

いつも見られ、監視され、品定めされ、時に嘲られ、

誉められる。

そんな死ぬまで続く…

しがらみよりは、ましに思えた。



「お嬢様…お時間です」

ドアをノックする音とともに、この家に仕えている執事が、姿を見せた。

「今、行きます」

鏡にそっと手を触れる。

大きな鏡は、部屋のすべてを映していた。

この鏡は、パパがつけたもの。

お前のすべては覗かれていると思いなさい。

里緒菜は、鏡の中の自分を見つめる。