振り返った啓介の脇腹に………突き刺さった。

「ティア…」

「あなたが悪いのよ」

冷ややかな笑みを浮かべ、離れるティア。

啓介は、その場倒れ込んだ。

「ティア…」

小さなナイフが、

脇腹に突き刺さっていた。

ティアはまた、大声で笑うと、

一瞬で無表情になり、

「さよなら…啓介」

長い髪を翻し、啓介の横を通り過ぎ、

そのまま、

通路の奥に消えていった。






「やれやれ…」

そばで、その様子を見ていたジャックが、肩をすくねながら、

啓介に近づいてきた。

「女は、こわいね〜役に立たなくなったら…ぐさっか…」

啓介を見下ろしながら、

ジャックは、タバコに火をつけた。

「まあ、俺はあんたに儲けさせてもらったし…楽しかったぜ。礼を言うよ」

ジャックは、しゃがみ込み、啓介の顔に、煙を吹きかけた。

「ナイフは、抜かない方がいい」

にゃっと笑うと、

ジャックは立ち上がり、

「あんたのおかげで、音楽にも興味を持てた。まだまだ…金になりそうだ」

ジャックは歩き出す。

「もし、助かったら…また会おう。業界で」

ジャックは手を上げ、そのまま消えていった。