「何の用だ?お前とは、縁を切ったはずだ」

一人…会長室にいた光太郎は、窓の外を見ながら、電話を取った。

夕陽が沈み、夜が訪れる。


「あなたのお孫さんの話です!お孫さんを、助けたくはないですか!」

受話器の向こうで、和也が叫んだ。


「孫か…」

光太郎は苦笑すると、

目をつぶり、

「お前の…好きにしろ」

呟くように言うと、電話を切った。

少し間をあけて、

光太郎は、徐に受話器を取り、電話をかける。

「すいません…時祭ですが」

用件を一方的に、話すと、光太郎は、受話器を置いた。

再び窓に向かい、街並みを見下ろしながら、

胸ポケットから、写真を取り出した。

「千春…」

あどけない笑顔を見せる…

出会った頃の少女の女。

光太郎は、写真をまたポケットにしまうと、

「私たちの孫を、助けてやってくれ」

この窓の向こう、

遠く離れた場所にあるはずの、

会場を見つめた。