「繰り返します。たった今、新しいボーカリストが、会場入りした模様です!」


「速水…」

和也がつぶやいた。

「会場が今、開きました!人が、なだれ込んでいきます!」



「和也」

二階にいた律子が、降りて来た。

「直樹くんはまだ、帰って来ないのかい?」

和也は、テレビを消した。


「母さん…」

和也は、消えたテレビ画面を見つめ、

「ちょっと出かけるよ」

「どこにいくの?」

「直樹を、迎えに行ってくる」

和也はそう言うと、店を飛び出した。

走りながら、携帯をかける。


「あなたに、頼みがある!」

和也は、携帯に向かって叫んだ。