黄昏に香る音色 2

里美は扉の鍵を閉めながら、

「今日は、営業もできないわ」

里美は裏口に走る。

向こうも鍵をかけないと。

「亜希子おばさんに、連絡したから…今日は、もう一つの家に泊まりなさい」


電話を切った香里奈は、ため息をついた。

「家…マスコミで、いっぱいみたい」


「速水さん…」

直樹が心配そうに、香里奈を見た。

「大丈夫!今日は、店じゃなくって…他の家に帰るから…」

「他に家なんてあるの!」

祥子と恵美が、思わず声を荒げた。

香里奈は薄ら笑いを浮かべながら、頷いた。

「昔…小さい時、ちょっとだけ…住んでたの。ママとパパ、あたしの三人で…」

「へえ〜」

感心する二人。


「その方がいいわね」

里緒菜も頷くと、

「あまり目立たない方がいい」


香里奈はまた、ため息をつくと、

「何で…こんな苦労しなくちゃならないのよ」

香里奈は、下に置いていたカバンを手に取った。

「もう帰る」

香里奈は、歩きだした。

どうせ家は、店と反対方向にあるため、みんなとは方向が違う。


「香里奈!」

去っていく香里奈を、里緒菜が呼び止めた。