黄昏に香る音色 2

大輔は両手を広げながら、

「我々は、次のレベルの歌を、あなた方に聴かせることができる。志乃さえも、忘れさすような声を!」

記者の中から、質問が飛ぶ。

「誰か…新しいボーカルが、もう決まってるのですか?」

大輔は頷く。

「それは誰ですか?」

「しかし…志乃さんが倒れて、すぐに新しいボーカルを発表するなんて…不謹慎じゃないんですか?」

記者たちは頷く。

大輔は席に座ると、鼻で笑った。

「音楽は、感傷でするものではない」

「そんなに自信があるんでしたら…歌手は誰です。有名な人ですか?」

「今のシーンにはいない…」

「新人…ですか?」

「新人…世に出てないという意味なら。しかし、彼女は生まれながらに、歌手だ」

「誰なんです」

「安藤理恵…」

大輔の呟きに、

記者がざわめく。

「河野和美」

記者たちは、その名に驚いた。

二人とも、世界中で成功し、

日本人で、数少ない成功した歌手だ。

今は亡き…伝説のシンガーたち。

「彼女たちの血縁者ですか?」

「だとしたら…もう1人いますね。速水…」

「速水明日香…」

大輔は、憎々しく呟いた。