黄昏に香る音色 2

「よかったね」

「感動したあ」

祥子と恵美が、楽しそうに、今見た劇の感想を言う。

そんな中、

香里奈だけは、無言で席を立ち、歩き出す。

「ちょっと香里奈ちゃん!」

「どこ行くんだ?」

香里奈は、二人に振り返り、

「ごめん…あたし…先、帰るね」

「里緒菜に、会わないのか?」

恵美の言葉に、香里奈は頷き、

「ごめん…」

「飯田くんもいるよ」

祥子が言ったが、

香里奈は、体育館を出ていった。



外に出ると、

香里奈は、胸を押さえた。

胸の奥が、酷く痛んだ。

里緒菜と直樹…。

二人は、演技に見えなかった。

特に、里緒菜。

激し過ぎる気持ちのぶつけ合いは、

演技に思えなかった。

香里奈は、その演技に魅せられながらも、

激しい嫌悪感に、おそわれていた。

それが、嫉妬だと…

香里奈は、気づかなかった。