黄昏に香る音色 2

明日香が、ニューヨークに着いた時には、もうコンサートは終わっていた。

真っ直ぐに、サミーのスタジオへと向かう。

スタジオは、騒然となっていた。

何人か、明日香が知っているミュージシャンがいた。

明日香が、スタジオに入ると、一斉に近づいてくる。

「明日香…あれはなんだ…?」

「あの音は…」

「あれは、人間が出したら、ダメな音だ」

「その場にいたら、危険だと感じ…みんなで逃げたよ」

ちゃんとした耳を持つミュージシャンは、本能的に危険を感じたらしい。

「明日香…」

ミュージシャンの輪の中から、サミーが出てきた。

「あれは多分…啓介だ…感覚はちがうが…音色は、やつのものだ…」

サミーの体は、震えていた。

「恐ろしい…恐ろしい音だ…」

「サミー…」

「だけどな…明日香…」

サミーは震えながらも、笑っていた。

「恐ろしいくせに、また聴きたいと思ってる…俺の耳が…俺の体が…聴きたいと…」

他のミュージシャンもみんな、頷く。

サミーは明日香を見つめ、

「それが…恐ろしい」

口は笑いながらも、目の奥は怯えていた。

「明日香…かかわるな…やつに…。わかってるはずだ…」

サミーは、明日香を見つめ、

「お前では、啓介に勝てないと…」