アメリカの音楽シーンは、騒然となりながらも、

誰も文句は、言わなかった。

あまりの狂信的な人気と、狂信的なファン。

志乃を聴きにいく人々に、注意を促したロックシンガーが、

自宅近くで襲われるという事件が起こったのだ。

それは、一度だけではなく…。

通報で、駆けつけた警察の発砲。

それは、銃をもったファンとの、銃撃戦にまで発展した。

ティアは、その事件を伝えるテレビを見て、せせら笑った。

「もっとやり合ったらいい」

ティアは、テレビに映るファンも、警官も睨んでいた。

「あたしたちの国は、もっと撃たれているわ」

ティアの隣で、無表情にテレビ画面を見つめるKK。

ティアはそっと、KKの手に自分の手を添えた。

「あなたは、何も気にしなくていいの」

ティアは、KKの肩にもたれた。

「ただ、サックスを吹くだけでいいの」

KKは、何もこたえない。

ただ画面を、見つめ続けるだけだ。