香里奈は、驚いていた。

あまり音楽に、興味を持たないようにしている香里奈でも、

その宣伝、広告、

テレビ等のオンエアの量は、凄まじかった。

そこら中で、志乃の姿を見ることができた。

異常な程に…。

アメリカでのデビューアルバムは、リリースの予定延期が、続いていた。

人気が出てるのに、アルバムが出せない。

レコード会社は、催促しているが、

バンドは、狂ったようにライブだけを続けた。

それとともに、まだ気づいてはいないが、

ライブ後の地域で、犯罪率が上がっていることを。

ライブの終わった会場は、必ず暴れる者が、何人も出ていることを。

主要なアメリカの都市を、ある程度制覇した志乃たちは、

次のターゲットを、日本へと向けた。

「今は、大雑把でいいわ」

ティアはステージの裾から、観客席を眺めていた。

「音が悪すぎる…これじゃあ、KKの音が、伝わり難いぞ」

ジャックは、耳栓を確かめながら、会場の音響の悪さに毒づいた。

ティアは肩をすくめ、

「今、これくらいでいいのよ」

「しかし…」

ティアは、ニヤッと笑うと、

「一斉に狂ったら、面白くないじゃない。じわじわがいいのよ」