黄昏に香る音色 2

「上行こうか」

直樹が誘ったが、

和也は首を横に振り、

「ここでいいよ」

和也はカウンターに座りながら、店内を見つめている。

直樹がカウンターに入り、お茶を出そうと、冷蔵庫を開けた。

「いいよ」

和也は、そう言ったけど、

直樹は、お茶の入ったペットボトルを開けた。


グラスを2つだし、お茶を注ぐ。

直樹は、グラスを手渡した。

和也は、一口飲んだ。

「これは…つくってるのか」

直樹は、ペットボトルをしまいながら、

「お茶ぐらい、自分で沸かすよ」

直樹は冷蔵庫を閉めると、カウンターから出た。

「何かあったのか?」

「いや…ちょっとな…」

和也は、直樹から視線を外した。

直樹は少し距離をおいて、お茶を飲む。

しばらくして、

和也は、持っていたグラスを置くと、立ち上がった。

「すまないな…こんな時間に押しかけて…」

「何言ってるんだ。もともとお前の家だろ。俺が今、借りてるだけだ」

「それも…俺のせいだろ。俺が高校を変えたから…」


「和也」

直樹は真剣な顔で、和也をにらんだ。

和也はフッと笑うと…、

「ちがったな…。お前の勝手だったな…」