「あたしたちはレコーディングをしていました…。その合間に、啓介だけが、知り合いのライブに呼ばれて、カリフォルニアに向かったのです」

明日香は、淡々と話す。

「大きなチャリティーコンサートだったので…有名なアーティストがたくさん出ていました…。そのコンサートの移動途中に…」


「うそおっしゃい!」

明日香の言葉を、里美が遮った。

「もういいでしょ…あんたは頑張ったわ」

里美はカウンターから出て、明日香に近づき、

「もうかばう必要もないのよ」

「里美…」

「あんたは言いにくいでしょ。あたしが言うわ」

里美は阿部たちの方に、顔を向け、

「カリフォルニアでコンサートがあったのは、本当だけど…啓介さんは、一人ではなかったわ」

「さ、さとみ!」

狼狽える明日香を無視し、里美は言葉を続ける。

「天城百合子もいた…生まれたばかりの赤ん坊を連れて」


「やめて!」

明日香は絶叫する。

しかし、里美は言葉を続ける。

「そこで、コンサート終了後、三人は車で移動中に…事故にあう。」

明日香は手で顔を覆った。

「百合子さんは即死。啓介は重傷…赤ん坊の和恵だけは、奇跡的に無傷だった」

「明日香。あんたは事故を知り、すぐに駆けつけたけど…重傷だった啓介さんは…病院からいなくなっていた…」