Caught by …

「でも、ソファーも素敵だから…」

 目を反らしてぶつぶつ言う。彼は笑っているだろうから、そちらを向きたくないのに、優しく私を呼んだりするから彼を見上げてしまう。

「俺以外見るな、セシーリアは俺だけ見ていればいい」

 私の髪を梳いて、親指で頬を撫でて。その表情は笑っているのに悲しそうで、きっと、私もそんな顔をしている。お互いに何も言わず、引き寄せられるように距離が縮まって、キスをした。

 一瞬重なっただけのキス。だけど、二人の視線は絡まったまま…いや、彼の瞳に捕らわれているのは私だ。

「セシーリアが欲しい。他の男にその唇も肌も髪も、セシーリアの全部に触れることなんて許さない」

 囁くように掠れた声に身体の奥が熱くなって、めまいがする。私は彼の胸に手をあてて、顎に軽いキスをする。

 …ごめんなさい、と心の中で謝って。

 私は卑怯ものなんだ。いつか、こんな私の側には誰一人居なくなってしまう。トムもレイも、ベッテもアンネも、みんな私を嫌いになる。

 私はこんな時だって素直になろうとしない。

 自分の気持ちなんて分かりきっているのに。

 失うものを恐れることさえ、そのリスクになる事を知らないふりをする。

「足りない…全然」

 荒々しく重なった唇、息をするのさえ忘れて、ただひたすらに彼を求めて、そして私を求められて、深く、深く…。