Caught by …

 危うく聞き流しそうになって、けど、私は足に急ブレーキをかけて彼を振り返る。

 いきなり止まるな、なんて怒られた気がした。それでも、私は落ち着かない心をなんとか抑えて、息を吐いて、それから吸って…。

「い、今…なんて…?」

 うまく声が出せなかった。縋るように見上げる私に、彼は不機嫌な顔をした。

「いきなり止まるな?」

「そうじゃなくって」

「…聞こえなかったのなら、それでいい」

「だめ、おねがい…レイ」

 一度目を反らされて、それでも待っていると、彼はますます機嫌を悪くしたように…いや、もしかして、恥ずかしがってる?

「だから、俺は、あんたに惚れてるんだって話だ」

 言った本人よりも恥ずかしがってしまう私に、レイの呆れ顔。何も言えないでいると、額を指で軽く弾かれた。

「やっぱり鈍感」

「だ、だって、レイから、そんなこと言ってくれてなかったから!」

「馬鹿だな、それくらい分かるだろ」

  分からないわよ!と吠えてやりたいけど、にやける顔を必死に抑えなくてはならず、そんな余裕はなかった。

「機嫌が直ったなら、早く行くぞ」

 ぶっきらぼうな言い方だが、どこか優しく聞こえるのは私だけだろうか?

 あぁ、また好きになった。

 これから、どれだけ彼を好きになるのか。

 怖いのに、私の胸は高鳴り続けている。