Caught by …

 薄化粧にお洒落とは到底言えない格好をした私がひどく不釣り合いな気がしてきて、隣を歩くのさえ図々しいように思える。私は彼に気づかれない程度に距離を置いた。

 もっと、可愛かったなら…もっと、お洒落に気を使えていたら…もっと、もっと…って、私は何をしたって彼には似合わないのに。

 周りの目が、彼の隣にいる私を見て嗤っているように思えて俯く。

「セシーリア」

 名前を呼ばれて彼を見上げる。まだ眉を寄せて不機嫌そう。私もきっと同じ顔をしている。

「今度は何が気に入らなかった?」

「いいえ、何も」

「何もない顔じゃないだろ、ちゃんと言え」

「ほんとに何もないわ。あなたの方が私に不満があるみたいよ」

 せっかくのデートなのに、喧嘩するなんて。それでも、私は彼から顔を反らして唇を噛む。

「ああ、そうやって可愛いげのない顔されたら誰だっていい気はしないだろうな」

 彼は握っていた手に力を込めて、自分の方へ引き寄せる。立ち止まって向かい合う私たちを、周りのお客さんが好奇の目を向けてすれ違っていた。

 レイはそんな目すら気にしていない様子で、私をじっと見つめる。私は居たたまれないこの状況にため息を吐く。

「分かったから、離して。お店の迷惑になるでしょ」

「じゃあ、ちゃんと話せ」

 私もそうだけど、レイも頑固者なんだから。これ以上意地を張っても仕方ないと、私は渋々と口を開く。

「あなたの隣を歩く私が場違いな気がしていただけよ。そう、それだけ。ね?とくに何もないでしょ」