ほんのちょっとだけ寝ていたつもりだった。いつも部屋で休日を過ごすときは勉強して、少し疲れたら昼寝をとって、また勉強を。だから、もう起きようとしていると…
唇に触れる何か。いや、何かなんて見なくても分かる。
「…レイ?」
目を開けて顔を上げる。思った通り、彼が目の前にいた。
「愛のキスでお目覚めか、プリンセス?」
だんだん目が覚めて、今いるのが部屋ではなくて彼の車の中だと気づいた。
「ご、ごめんなさい!あの、えっと…」
「ほんの数分寝ていたんだ。これ、飲め」
寝起きのキスと、機嫌の良い彼のえくぼに動悸が止まらない。差し出された水を受け取り、一口飲んだ。
「プリンセスなんて…私じゃないわ」
夢の記憶を思い出して呟くと、思ったよりも卑屈っぽく響いてしまった。
「あ、私、学校の演劇で魔女の役だったのよ。王子様は初恋の人だったけど、私なんかが彼のお姫様なんてなれっこなかった。プリンセスとは程遠い人間だから」
笑って誤魔化すけど、隣の彼は腑に落ちないという顔をして黙っていた。
「…その、私なんかというのが気に入らない」
口を開いたかと思えば独り言のように言って、私の方へと顔を近づけさせた。
「そうやって自分で自分の魅力を下げていることに気づいてないのか?」
息がかかるほど近い。その彼の指が私の頬を撫で、首筋を下る。
「いいか、セシーリア?今後いっさい、自分を下げる言葉は使うな」
有無を言わさぬ言い方に、私はとりあえず頷いて見せる。それに彼は納得したのか、額に口づけて離れると車を走らせた。
唇に触れる何か。いや、何かなんて見なくても分かる。
「…レイ?」
目を開けて顔を上げる。思った通り、彼が目の前にいた。
「愛のキスでお目覚めか、プリンセス?」
だんだん目が覚めて、今いるのが部屋ではなくて彼の車の中だと気づいた。
「ご、ごめんなさい!あの、えっと…」
「ほんの数分寝ていたんだ。これ、飲め」
寝起きのキスと、機嫌の良い彼のえくぼに動悸が止まらない。差し出された水を受け取り、一口飲んだ。
「プリンセスなんて…私じゃないわ」
夢の記憶を思い出して呟くと、思ったよりも卑屈っぽく響いてしまった。
「あ、私、学校の演劇で魔女の役だったのよ。王子様は初恋の人だったけど、私なんかが彼のお姫様なんてなれっこなかった。プリンセスとは程遠い人間だから」
笑って誤魔化すけど、隣の彼は腑に落ちないという顔をして黙っていた。
「…その、私なんかというのが気に入らない」
口を開いたかと思えば独り言のように言って、私の方へと顔を近づけさせた。
「そうやって自分で自分の魅力を下げていることに気づいてないのか?」
息がかかるほど近い。その彼の指が私の頬を撫で、首筋を下る。
「いいか、セシーリア?今後いっさい、自分を下げる言葉は使うな」
有無を言わさぬ言い方に、私はとりあえず頷いて見せる。それに彼は納得したのか、額に口づけて離れると車を走らせた。



