Caught by …

 どうして姉の話を口から出すことができたのか、自分でも分からない。家族は姉の名前を出すのも躊躇するのに。

 思わず溢れそうになる涙が、まだ前に進めずにいる私の弱さだった。

「偶然ね、同じ年にお互いの家族が…。でも、私はちっとも受け入れられないの、どうしようもない妹だって、きっと姉は思ってるでしょうね」

 なるべく明るく振る舞って、笑って、弱さを隠そうとする。それなのに……

「受け入れなくていいんじゃないか?」

 全てを包み込むような、レイの言葉。

「無理に理解しようとしたって、そんなこと出来る訳でもない。ならとにかく今は、亡くなってしまった大切な人を悲しむだけ悲しめばいい。俺はその涙を笑ったりしない」

 真剣な眼差しは私の弱さを見透かしているみたい。だけど、私は余計に隠そうと強がろうとする。

「そ、そんなこと…言わないでっ…私はあの人のこと、大嫌いなの。悲しんでるんじゃないわ…恨んでさえいるの…だから…私は…!」

 メニューの上に雫が落ちた。そこから、また一粒、また一粒と落ちていく。

「セシーリア、俺に嘘なんてつくな」

 レイの手が私の頭を引き寄せて、二人の額がひっつく。溢れだしてしまった涙の雫を、彼が掬いとった。

「嘘じゃない、嘘じゃないわ」

「……意外と頑固だな、俺のプリンセスは」

 きっと今の私はいつも以上に不細工な顔をしているのに、彼が笑ってそんなことを言う。

 私にだけ向けられるその笑顔と、泣いていることを大きな手で隠してくれる優しさに、また違った涙が流れる。それはあたたかい涙だった。