「なに?何かおかしいか?」
「いいえ…あの、正直に答えて、くれると思ってなかったから」
真正面から見つめられると、どうも駄目だ。彼自身の話を聞けただけでも気持ちが舞い上がってしまう。私はそれを気づかれないよう、またメニューに目を落とす。
「ここは融通も聞くからな。普通は並ばないと店に入れないけど、電話すればこうして席を取っておいてくれる」
「じゃあ、あなたのお父さんもよくここに?」
メニューに並ぶ料理はどれも美味しそうで迷う私が何気なく聞いたら、彼からの返事がない。
調子に乗りすぎたかもしれないと、恐る恐る彼を見る。
「死んだ…三年前の秋に」
賑やかな笑い声もウエイトレスの元気な声も、彼の静かで落ち着いた声に消されていた。
私は言葉をなくし、聞いたことを心底後悔した。彼の表情は相変わらず無表情だが、伏せた目蓋が哀しみを隠しているように見えて、何か声をかけたいのにうまく言えないで謝るしかできなかった。
「別に構わない。もう三年も経つし、その前から病気で余命がいくばくもないことは分かってた」
“三年”
姉が死んだのも“三年”前。三年前の冬だった。
突然だった。姉が横たわるお風呂場で立ち尽くす高校生の私は、ちっともその場所から動こうとしない。だけど、彼はお父さんの死を受け入れて、前に進んでいるんだ。
「セシーリア?顔色が悪いが、どうかしたか?」
「え?あ、ううん、ただ…」
「ただ?」
「私の姉も…三年前に…」
「いいえ…あの、正直に答えて、くれると思ってなかったから」
真正面から見つめられると、どうも駄目だ。彼自身の話を聞けただけでも気持ちが舞い上がってしまう。私はそれを気づかれないよう、またメニューに目を落とす。
「ここは融通も聞くからな。普通は並ばないと店に入れないけど、電話すればこうして席を取っておいてくれる」
「じゃあ、あなたのお父さんもよくここに?」
メニューに並ぶ料理はどれも美味しそうで迷う私が何気なく聞いたら、彼からの返事がない。
調子に乗りすぎたかもしれないと、恐る恐る彼を見る。
「死んだ…三年前の秋に」
賑やかな笑い声もウエイトレスの元気な声も、彼の静かで落ち着いた声に消されていた。
私は言葉をなくし、聞いたことを心底後悔した。彼の表情は相変わらず無表情だが、伏せた目蓋が哀しみを隠しているように見えて、何か声をかけたいのにうまく言えないで謝るしかできなかった。
「別に構わない。もう三年も経つし、その前から病気で余命がいくばくもないことは分かってた」
“三年”
姉が死んだのも“三年”前。三年前の冬だった。
突然だった。姉が横たわるお風呂場で立ち尽くす高校生の私は、ちっともその場所から動こうとしない。だけど、彼はお父さんの死を受け入れて、前に進んでいるんだ。
「セシーリア?顔色が悪いが、どうかしたか?」
「え?あ、ううん、ただ…」
「ただ?」
「私の姉も…三年前に…」



