Caught by …

†

「そろそろ、行き先を教えてくれてもいいんじゃない？」

　彼は確かにすぐに戻ってきて、着替えを済まして薄化粧だけした私の手を引っ張って自分の車に乗せて…何も言わず、無表情で、こちらを見ようとさえしない。

　彼とのデートだなんて浮かれた私が可哀想で、そして、愚かだった。

「せっかくの休日なのに…」

　ぼそっと、恨みがましく呟くと、レイはようやくこちらに目を向けた。

「ノーメイクでだらしない服を着て、一日中勉強するよりかはマシだと思うが？」

　憎たらしく鼻で笑った彼に、私も同じように笑ってやる。

「そんな楽しい所に連れていってくれるのかしら？」

「さぁ…？楽しくはないだろうけど、退屈はしない」

　意味がさっぱり分からなくて、窓の外に目を向けた。そういえば、起きてから何も食べていない…と通りすぎるアジアンファストフードの店を見送って思う。

「まぁ、まずは腹ごしらえをしてからだ」

「え？」

　そう言った彼を振り返る。私の心の中を読み取ったんじゃないかと思うほどタイミングが良すぎて驚く私に、「ん？」と不思議そうなレイ。

「何でもない、私もちょうどお腹が空いてたところ」

　また窓の方を向いて言った。

「そりゃ良かった」

　顔を見合わせなくても二人が笑っているのが分かる。今日は楽しい日になるだろうと、子供のように心が踊った。