Caught by …

「セシーリア?こんな時間に、そこで何してるんだ」

 いきなり現れたレイに驚いた私は怒っていたことも忘れて「蛇口が閉まりきってなかったから」なんて普通に答えてしまう。

 彼の妙に焦ったような、心配するような顔が私の返事を聞いて安堵する…その事にも不思議に思って尋ねようとして、少し前の出来事を思い出した私は口を噤み、彼から顔をそらす。

 そして彼の横を通りすぎようとして、腕を掴まれた。それでも構わず無視しようとする私に、彼がいい加減にしろと言うように名前を呼んだ。

 悔しいけど、その低くて不機嫌な声も私をときめかせ、つい顔を上げてしまう。

「はあ、悪かった…これで良いだろう?」

「それは何に対しての悪かった、なの」

「俺がセシーリアの質問に答えなかった、それが気に入らなかったんだろ」

 ほんとにそんなことで私が怒ってるとでも?再びむかむかしてくる気持ち。一度深呼吸して、それをぐっと抑え口を開く。

「違うわ、答えなかったことじゃなくて、その答え方があなたに拒絶されたみたいで悲しかったの。それに…」

「それに?」

 一瞬だけ、レイの前でトムの名前を出していいか躊躇う。けど、早く先を言えとばかりに私を見つめる彼に観念して私は正直に答える。

「トムと付き合ってる限り、あなたと…その…セックスするのは…なんというか…」

 その先をどう言えば良いのか考えあぐねて言葉を濁す私を、彼は突然抱き締めていた。戸惑っている私に…

「俺より、ボーイフレンドをとるのか?俺を好きだといったのは嘘なのか」