Caught by …

 どうすれば傷つけ合わずに別れられるか考えれば考えるほど、気が重くなる。そもそも、そんな方法なんてないのかもしれない。

 知らず重いため息を吐いていた私。つい油断していると…

「何を考えてるんだ?」

 すぐ側まで来ていたレイが後ろからお腹に腕を回し、耳元で囁いた。反応してしまう体は発火したように熱くなり、逃げ出そうとしたけれど、回された腕に力が込められ二人の体がさっきより密着してしまう。

「どうして逃げる?俺が好きなのに」

「好きでも、逃げるのよ。いろいろ…複雑なの」

 彼は無自覚でやってるのだろうが、耳元で囁かれる度に動悸がして苦しい。まともな答えも返せなくなる。

「複雑?肌を重ねれば余計な事も忘れてしまう。俺がそんな余裕もなくしてやるよ」

 すると突然首筋に彼の舌が這い、止めさせようと開いた口に彼の指が入り込む。荒い息遣いと熱い舌に、抗えなくなる私。

 しかし、拒絶された痛みを誤魔化されているみたいに思える上に私の気持ちなんて分かろうともしない彼の思い通りになるのが癪で、私は彼の指を歯で噛んでやる。

 思ってもない反撃だったのか指を口から抜き腕の力を弱めた彼の隙をついて、私は彼から離れる。

「セシーリア…これはどういう?」

 綺麗な顔に青筋を立てたレイが恐ろしいけれど、私は平静なふりをして腕を組んだ。

「さぁ?とにかく私はあなたと寝ない。あなたが私を怒らせたの、それを反省するまで許さないから」