Caught by …

 彼を連れて部屋に戻ってきて、冷えきった体を温めるため二人してコートも着たままにストーブを囲む。

「ねぇ、レイ?」

「ん」

 ストーブのオレンジ色に照らされた彼の顔は無表情なのに優しく見えて、私は少しの勇気を振り絞って口を開く。

「どうしていつも道端に座っていたの?誰かを…待っていたの?」

 何となくだけど、聞かない方が良いことなのかもしれないと思う。でも、今なら聞いても良いかもと触れ合う肩の距離の近さに任せて彼の返事を待つ。

「そんなこと、どうでも良いだろ。…あんたに関係ない」

 少し間があって返ってきた言葉。そして、立ち上がって離れた距離。

「な、なんでそんな言い方…っ。ちょっと気になって聞いただけよ」

 私はそのことをなんとも思ってないように繕って、唇を噛んだ。彼の言葉一つで傷ついて泣きたくなっているなんて、馬鹿馬鹿しくて惨めだ。だから、彼の後ろ姿に向かって言うと、レイが足を止め振り返った。

「興味本位で聞くな」

 私は口を閉じてストーブに向き直るしかできなかった。言い返せない悔しさと、彼の冷たい言葉と表情にやるせない気持ちで胸がいっぱいになる。さっきまではこんな険悪な雰囲気はなかったのに。

「あんな怒らなくてもいいじゃない」

 頬を両手で包んで口を尖らせ、やっぱり嫌いよと心の中で呟く。声に出さないのは惚れた弱みだから、余計に悔しい。

 彼がどこに行くのか耳を澄ましていると、浴室のドアが開く音が、次いで閉まる音も聞こえてシャワーを浴びに行ったらしい。何を考えているか分からない不機嫌自由人な彼に嘆息して、私はコートを脱いだ。