本当はあなたが思うような人間じゃないの。ボーイフレンド以外の男の人を好きになるような、最低な人間なの。
言いかけた私の言葉、けれど、実際に彼の耳に届くことはなかった。
「あ、トム!こっちに来てくれよ!早く‼」
「え!ああ、分かったよ、すぐ行くから!」
同じ学部の友人に呼ばれ、手を振って返すトムが再び私の方を見て「で、話って?」と聞き返す。
「ううん…なんでも、ないわ。ほんとに、なんでも」
笑顔を繕って、首を振る。
「そ?…じゃあ、また!」
一瞬、疑る表情をしたが、彼は軽いキスを私の額に落として、友人たちの所へ颯爽と行ってしまう。
彼は私を大切にしてくれる。それと同じように友人も大切にする。
少し前まで、その事をちょっと寂しく思っていた。…それが、今はほっとしているなんて。
やっぱり、私は最低だ。
本当のことを伝えるのを後伸ばしにできたと思い、また、レイと会えることを楽しみにしているなんて。
ねぇ、レイ…あなたはこんな私をどう思ってる?
早く会いたい。
塞ぎ混む私の弱さを、あなたの大きな手で包んで欲しい。
臆病で、卑怯で、ネガティブな私を。