そうしている内に、身体の奥で波打っていたものが間隔を狭めて熱い何かが高まっていくのを感じ、意思に関係なく背中が反り返った。自分が自分でいられなくなりそうで、両目をぎゅっとつぶって頭を枕に押しつける。

 その瞬間、私を抑えていたものがなくなって、足がビクビクと震え始めた。

 無意識に止めていた呼吸、息を吐き出すと自分でも驚くほど切ない吐息が出て口を手で押さえる。彼を見れば、長い指で口元を拭ってそれを舐めとっていた。

「どう?初めてのオーガズムは」

 彼の直球すぎる言葉に、もうどうしてそんなことが言えるのだろうと考えるのは止めようと思った。きっと、彼は回りくどい言い方なんてする人間じゃないのだ。

 それがわかったとして、私もそうなれる訳ではないけれど。

 黙ったまま、荒い息を繰り返す私に彼の口端が上がる。

「何も言えなくなるぐらい気持ちよかったのか?だけど、まだ落ち着くのは早いぜ。まだこれは序盤にすぎない」

 恍惚とした表情は不思議なくらい不気味で、身体がぞくぞくする。

 私の腰の両側に手をついて身体をひっつけさせた彼の熱と私の熱が、お互いを求め合っている。

 それは今日初めて言葉を交わして、初めて触れ合っただけの二人ではなく、もっと深い所で関わり合っていたような…そんな幻想を抱いてしまう私を、彼は笑うだろうか?

 それでも、良い。この夢のようなひとときが、一瞬でも一秒でも長く、私の弱くささくれたった心を溶かしてくれれば。