Caught by …

「いずれ消えるんだから、こんなに洗う必要はない」

 彼の言っていることは正しいし、自分でも分かっている。…なのに、冷静で冷たい口調に、どうしてか泣きそうになる。

「離して」

 涙を堪えている所なんて見られたくなくて、私は流れ続ける水をじっと見つめて彼から顔を隠す。

「こっちを向けよ」

 それを知ってか彼が命令するように言ってくるけれど、私は顔を背けた。

「俺は、二度も同じことは言わないぞ」

 低くて恐ろしい声の彼に焦りを感じたが、それでも無視し続けたら…

「……っえ!?」

 腕に温かい感触を感じて彼の方へ振り向けば、彼が私の腕にキスをしていた。その、突然の行為にパニックになる。全身が火照り、心臓は暴れ、嫌がることもできずに立ち尽くす。

 唇が軽く触れるだけだったのが啄むような口付けに変わり、今まで感じたことのない、熱くて痺れる感覚に息が上がる。

 彼は目だけをこちらに向けて私の反応を見ると、一瞬だけ口角を上げ、次には熱い舌で痕をなぞるように舐めていた。

 この甘くて刺激的な行為の先はどんなものだろうと、このまま彼の思うままにされたいと、ぼんやりした意識で考えている自分がいて…だけど、頭に浮かんだ両親とボーイフレンドの顔が私の意識を現実に引き戻す。

 私が腕を引くと、彼の唇も掴んでいた手もすぐに離れた。