Caught by …

 我に返った私が、体の向きを変えて彼を突き出そうとした。しかし、それはいとも容易く押さえられて、開きかけた口も塞がれると、彼は勝手にドアを開けて中へと入っていく。

 無情にも閉じたドア。後ろ向きで彼に押されるまま部屋の奥へ連れていかれ、そこにあったベッドまで来ると私の足が端に当たり堪えきれずに体制を崩してしまった。

 彼も一緒にベッドへと倒れ込んで、私の顔の横に両手をつく。私を見下ろす彼は少し長い髪が顔の周りにかかったのを煩わしそうに手でかき上げた。

 その色っぽい仕草に思わず目が奪われてしまい、それに気づいた彼と目が合った。私は慌てて目を反らすけれど、彼は余裕綽々の笑みを浮かべて顔を近づけてきた。

「答えたくないのか?それとも、答えられないほどトムという男が通いつめていて、厭らしいことをしているのか?」

「違う!…な、なんで名前も知らないあなたに、そ、そんな無礼なことを言われなきゃいけないの、よ!」

 胸の上で両手を握りしめ、精一杯の声を出す。

 至極まっとうな事を言っているつもりだった。だってそうでしょう?素性も知らない彼に恥をかかせられるなんて、変だもの。

 だけど彼は、一瞬私の怒鳴り声に怯んだだけで、すぐにニヒルな顔をして私を見る。

「へぇ、トムとまだセックスしてないのか。じゃあ、この部屋に男を呼んだのも俺が初めて?」

 あからさまな言い方に私は何も言えないで、固まってしまう。