その後ろからは黙ってついてきていた彼。鞄から取りだした鍵でドアを開けようとするが、薄暗いアパートの唯一の頼りである月明かりが今は彼の背中に隠れていて、鍵穴がなかなか見つからない。
苦戦している私に見かねたのか、後ろから彼の腕が伸びてきて…
「…っあ」
私の手を包み込むように握ると、鍵穴へと導く。
彼は特に意識をしていないのだろうが、まるで後ろから抱き締められているみたいで、ついドキドキしてしまう。
…て、やっぱり可笑しい。こんなにドキドキするなんて私は病気にでもかかっているんじゃないのか。いや、ただの気のせいだ。
彼のおかげで開けることのできた鍵。とにかく今は早く離れなきゃ、と思うのだけれど、重ねられた手が離れないので「あ、あの…」と少々上擦った声で問いかけると、彼の左手がお腹に回ってきて本当に抱き締められていた。
困惑する私の耳に彼の息がかかり、思わず声が漏れてしまう。
「…トムは、ここに来たのか?そんな声を聞かせてるのか?」
彼の質問に、冷水をかけられたような気分になった。
どうして今、ボーイフレンド以外の男に抱き締められていて、しかも部屋に入れようとしているのか。いくら恩人だとしても、二人きりで寝泊まりなんて…
日常とは違ったハプニングという熱にでも浮かされていたんだ。こんなの…私じゃない!
苦戦している私に見かねたのか、後ろから彼の腕が伸びてきて…
「…っあ」
私の手を包み込むように握ると、鍵穴へと導く。
彼は特に意識をしていないのだろうが、まるで後ろから抱き締められているみたいで、ついドキドキしてしまう。
…て、やっぱり可笑しい。こんなにドキドキするなんて私は病気にでもかかっているんじゃないのか。いや、ただの気のせいだ。
彼のおかげで開けることのできた鍵。とにかく今は早く離れなきゃ、と思うのだけれど、重ねられた手が離れないので「あ、あの…」と少々上擦った声で問いかけると、彼の左手がお腹に回ってきて本当に抱き締められていた。
困惑する私の耳に彼の息がかかり、思わず声が漏れてしまう。
「…トムは、ここに来たのか?そんな声を聞かせてるのか?」
彼の質問に、冷水をかけられたような気分になった。
どうして今、ボーイフレンド以外の男に抱き締められていて、しかも部屋に入れようとしているのか。いくら恩人だとしても、二人きりで寝泊まりなんて…
日常とは違ったハプニングという熱にでも浮かされていたんだ。こんなの…私じゃない!



