言い返したくて、でも、何も言葉が思い浮かばずに、唇を噛む。
私は小さい頃から話すのが苦手だった。家族とならそれを気にすることはないのだけれど、こういう風に外の人と話すとなると何か言わなければという気持ちが強くなりすぎて、何も言えなくなってしまう。
だからか黙っている私に“お人形さんみたい”と言う人は少なくない。
きっと、彼もこうして黙っている私に呆れてどこかに去ってしまうんだろうな。
だんだん俯く私は、彼の革靴を見つめる。
その内、足の向きを変えて、私から離れて……
知らず唇を噛む力を強くしていたら、急に下唇に触れる指があって、上唇と下唇が離された。驚いて目の前の彼を見れば、真剣な表情を私に向けていた。
「…一人で考えすぎるなよ」
「え?」
聞き返すと彼は手を引っ込め、屈んでいた体制をもとに戻して顔を背けてしまう。その横顔が何故か不機嫌そうで、私の頭の上にはクエスチョンマークがたくさん。
彼は、ほんと何なのだ。
私を助けて守ってくれたり、キスしようとしたり、挑発したり、不機嫌になったり。
…でも、ただ彼の姿を横目で見て、すれ違うだけだったら、彼のこんな姿を見れなかったのかな、なんて思う私の方が可笑しいのかも。
思わずにやけてしまう私。見られていないと思って再び彼に視線を向ける。けど…
「なんだ、一人で笑って?気持ち悪い」
私は小さい頃から話すのが苦手だった。家族とならそれを気にすることはないのだけれど、こういう風に外の人と話すとなると何か言わなければという気持ちが強くなりすぎて、何も言えなくなってしまう。
だからか黙っている私に“お人形さんみたい”と言う人は少なくない。
きっと、彼もこうして黙っている私に呆れてどこかに去ってしまうんだろうな。
だんだん俯く私は、彼の革靴を見つめる。
その内、足の向きを変えて、私から離れて……
知らず唇を噛む力を強くしていたら、急に下唇に触れる指があって、上唇と下唇が離された。驚いて目の前の彼を見れば、真剣な表情を私に向けていた。
「…一人で考えすぎるなよ」
「え?」
聞き返すと彼は手を引っ込め、屈んでいた体制をもとに戻して顔を背けてしまう。その横顔が何故か不機嫌そうで、私の頭の上にはクエスチョンマークがたくさん。
彼は、ほんと何なのだ。
私を助けて守ってくれたり、キスしようとしたり、挑発したり、不機嫌になったり。
…でも、ただ彼の姿を横目で見て、すれ違うだけだったら、彼のこんな姿を見れなかったのかな、なんて思う私の方が可笑しいのかも。
思わずにやけてしまう私。見られていないと思って再び彼に視線を向ける。けど…
「なんだ、一人で笑って?気持ち悪い」



