Caught by …

 唐突な返答に混乱する私とは対照的に、ジェーンは顔を赤くして俯いた。

 ダレルは知らない私に目を向けながら、

「花言葉があるように、カクテル言葉というものがあります。あなたたちが初めに飲んだキールというカクテル……それには“最高のめぐりあい”という意味があるのです」

 そんな意味があったのかという感動を覚えつつ、なぜ今その話を?という疑問に眉を寄せる。

「そして、先程頼まれたアプリコットフィズというカクテル、それには……“振り向いてください”」

 最後はジェーンの方へ目を向けて喋るダレル。

「ジェーンさん、それを知ってて、僕に?」

「あなたって意外と意地悪な人ね。こんな私でも一応女なのよ。女心をおおっぴらにして……」

 よほど恥ずかしいらしく、拗ねるジェーンを、ダレルは笑うのをなんとか堪えようとしている。

「ジェーンさんこそ男心をすっかり素通りして、他の男性との話ばかりして。覚えていますか?僕が一番最初にあなたに入れたお酒を」

「え?」

「それじゃあ、課題としましょうか。今週の土曜日、会うまでに思い出すこと。いいですね?」

 予想外の返事で彼女は一瞬呆気に取られて、まじまじと彼を見つめていた。私も、あまりの展開に野次馬だということも忘れて胸の高鳴りが止まらない。

「ジェーンさん?」

 そんな私たちの様子に戸惑ったような、気恥ずかしそうな彼の声で我に帰ったジェーンが、慌てて手に持っていたメモ用紙を彼に渡した。

「私の、連絡先!時間があるときでいいから、連絡してくれる?」