Caught by …

「ご注文ですか?お二人とも話に花を咲かせてグラスが空っぽですね」

「ええ、セシーリアとは今日初めて会ったとは思えないくらい気が合うの。それじゃあ、次は……アプリコットフィズをお願いできる?」

「はい」

 ダレルは軽く礼をして、手際よくお酒をつくっていく。私はなんとも言えない緊張に二人の様子を見守るしかない。ジェーンは財布からメモ用紙を取り出すと、何かを書き始めた。

 そしてそれが書き終わると、頼んでいたカクテルが出来上がり、グラスが目の前に置かれた。

「お待たせしました、アプリコットフィズです」

「ありがとう……ねぇ、ダレル」

「どうしました?」

 いつもの彼女とは雰囲気が違うのを感じ取ったのか、彼は落ち着いた静かな声で、彼女の言葉を待つ。ジェーンも、受け取ったカクテルをじっと見つめ、手の中にあるメモ用紙を握り締めていた。

「あなたに、頼みたい事があるの」

「頼みたい事?」

 ジェーンは何度か頷いて、自分を鼓舞するように深く息を吸い込んで、そして……

「今度、仲の良い友達とカウントダウンパーティーをするんだけど、そこに持っていくお酒を、あなたに選んでほしいの!それで、今週の土曜日、もし空いてたら一緒に…と思ってるのだけど」

 息をのんで二人を見る。ジェーンは自分を落ち着かせようとするように髪を耳にかけたりしていて、一方のダレルはその彼女の様子をじっと見つめている。

 彼の返事を早く聞きたくて、私も彼を見上げていると……

「カクテルには、カクテル言葉というものがあるのを知っていますか?」