Caught by …

　にっこりと笑いかけられて、どう反応すれば良いのか戸惑う私は思わず隣のジェーンに助けを求めた。

「何かあったとしてもあなたには頼りたくないわ、その胡散臭い笑顔が信用できないもの」

　容赦ない彼女の言葉にもバーテンダーは笑顔で、むしろ喜んでいるようだ。

「それでも僕の所に通ってくれて、すごく嬉しいですよ」

　そのへこたれなさに呆れてか、照れ隠しか、ジェーンは「お酒はまだなの？」と問う。

　私は黙って様子を伺っていたが、二人の間に漂う空気が甘くて、見ている方がなんだかドキドキしてしまう。ジェーンを見つめるバーテンダーの眼差しは特別なもののように感じた。

　彼は私たちの前にグラスを置いて、低くて色気のある声で「お待たせしました」と微笑んだ。

　グラスの中の赤ワインのような透き通る赤色が暗い照明に照らされていて、その綺麗さに魅入っているとジェーンがそれを持ち上げたので私もグラスを持ち上げる。

「今夜、最高の出会いに……乾杯！」

　目の高さに上げて口をつけた彼女の後に私もグラスに口をつけて傾けた。瞬間、広がる爽やかな味わいと果実の甘さに「……美味しい！」と呟いた私。ジェーンも同感だと言うように満足気に頷く。

「赤ワインのような見た目ですが、白ワインをベースにカシスリキュールを加えたキールと言うカクテルで、渋みや苦味がなくてとても飲みやすいと思います」

　教えてくれたバーテンダーにもう一度美味しいですと伝えれば、彼は優しく微笑んで礼をし、他のお客さんの所へと向かって行った。