Caught by …

 そして、ようやく自分が浴びせた言葉がどれだけ両親を傷つけたのか、考えれば考えるほど自己嫌悪に陥る。

 あの青ざめた母親の姿も、見たこともない険しい表情をした父親の姿も、全て私がそうさせたのだ。

「セシーリア、寒いから中に入りましょう?」

 腕を擦りながら中を指差した彼女は、早々に引き返していく。私もその後に続いて、名残惜しく夜景に背を向けた。

 中に戻ると、ジェーンはカウンター席に座っていて、コートを預けていた。私もそれに倣ってコートを脱ぎ、彼女の隣に座る。

「ここのカクテルはどれもすごく美味しいの。セシーリアはどんなものが好き?」

「私、お酒に詳しくないから、あなたと同じものを」

 ジェーンは常連らしくバーテンダーと親しげに話しながら注文をとる。やっぱり同世代とは違う、大人の女性で何気ない動作も色っぽい。

 そわそわと落ち着かない私は周りのお客さんの様子を伺ったり、バーテンダーがお酒を作る所を間近で見るのが初めてで見入ってしまったり、端から見ればあまりにも幼稚すぎただろう。

「こんな可愛い子をどこから連れ去ってきたんです?まさかここに警官を寄越すような事してませんよね」

 ジェーンと同じ歳(20代後半から30代前半)ほどのバーテンダーが、私を見ながら楽しそうに笑って言った。

「連れ去ってきたことに関しては否定しないけど、同意の上よ」

 私はそんなに子供に見えるのか、と少しだけ恥ずかしく思って俯くと、「何かあったら僕に言ってください?あなたの頼みなら何でも聞いちゃいますよ」とバリトンの低く響く声で囁かれた。